2016年3月16日 : 腰の痛み
立っていると、なんだか下腹部に引き攣れや痛みを感じる…そう感じたことはありますか?
- それは鼠径ヘルニアです
骨盤のグリグリした骨の上に痛みを感じた場合、鼠径ヘルニアの可能性があります。ヘルニアとは体内の臓器などが、本来あるべき正しい位置や環境から出っ張る状態のことを言います。
鼠径ヘルニアは、骨盤の上の腹直筋外縁・鼠径靱帯・内腹斜筋下縁で囲まれる三角形の部分「鼠径部」にある鼠径管に生じる腫瘤で、腹膜や腸の一部が筋膜の間からはみ出る、いわゆる「脱腸」と呼ばれている病気です。
ヘルニアというと腰椎ヘルニアなどが一般的に知られていますが、実は全ヘルニア中、最も頻度が高いのが、この鼠径ヘルニアなのです。
一般的に自覚症状は少なく、あれば臓器脱出による不快感、腸管膜の牽引痛などで留まります。しかし、飛び出たヘルニアを脱出孔で締め付けられる状態=嵌頓ヘルニアになると、腹痛・悪心・嘔吐などを伴い、更に絞扼すれば局所の痛みが増強し、全身状態は悪化する。最悪の場合、血液循環障害が起こり、激痛を伴って脱出した部分が壊死または壊疽に至る場合があります。
鼠径ヘルニアは、鼠径靱帯の内側上部の恥骨部付近に半球状の腫瘤を触知することで分かります。
つまり触診ですね。腫瘤は陰茎まで達することはほとんどないのですが、しばしば両側に発生し、近接に発症する他のヘルニアとの鑑別が問題となるのですが、ヘルニア門(出口となる孔)の外側に下腹壁動脈を触れれば、本症と診断できるので、自己判断ではなく、医療機関の受診をお勧めします。超音波にてヘルニア内容の確認や絞扼の有無、CTにて腸管壊死が鑑別・壊疽が確認など、精査も可能です。
鼠径ヘルニアは、「外鼠径ヘルニア」と、「内鼠径ヘルニア」の大きく2つに分かれます。
・外鼠径ヘルニア:内鼠径輪をヘルニア門として、大網、腸管、膀胱、女性では卵管、卵巣など、円靱帯に沿って外鼠径輪に脱出するヘルニアです。
簡単にいうと、腹壁に対し斜走して臓器が鼠径管の中を通って外に出てしまったいうことです。発生機転は、大部分は胎生期の睾丸下降、卵巣下降に関係ある先天性のもので、男児、幼児に多いのですが、成人でも皆無ではなく、先天性の要因に加え、ヘルニア門の組織加齢による脆弱化が関係して起こる場合があります。
・内鼠径ヘルニア:内側鼠径窩から鼠径管後壁(腹壁)が腹横筋膜を直角に膨隆して押し上げ、直接外鼠径輪より脱出するヘルニアで、ほとんどが高齢の男性に生じ、この腹横筋膜の組織の脆弱化が要因とされています。鼠径ヘルニアの10~20%を占め、外鼠径ヘルニアとの合併(パンタロンヘルニア)の可能性もあります。
治療方法は?
とび出したままで自発的に引っ込んでくれるものではありませんし、前記したように脱出門で嵌頓され、壊死してしまったら大変です!ですから、手術療法が原則となります。小児ではヘルニアのうを高位で結紮した後、精索を本来に位置に置くポッツ法などで十分とされています。
成人では従来の精索を前方に転位させるバッシーニ法、マクベイ法などを行っていたのですが、術後の突っ張り感が強く、また、再発が多いことから、最近ではほとんどがメッシュ栓をヘルニア門に挿入するメッシュプラグ法か、PHS法、又は形状記憶メッシュを腹膜前のスペースに置くクーゲル法などの緊張がかからない手術が行われています。
簡単に云うと医療用の糸で近くの筋膜を縫い縮めてヘルニアが飛び出さないようにして閉じこめるという従来の方法だと、術後の不快感が強かく、無理に縫い縮めた箇所が避けてまた飛び出してしまうという再発が多かったので、最近は腹壁の補強も兼ねてメッシュ状の布でフタをしてしまおうというものに変化してきたということ。感染リスクや患者への負担も小さく、再発が減ったというのが大きな成果でしょう。腹腔鏡下にも数多く行われており、日帰り手術や1泊2日入院も可能です。いずれも保険適応となっています。
どうしたら鼠径ヘルニアにならない?再発防止策は?
鼠径ヘルニアは、子どもの場合でも成人の場合でも、男性に多く起こる傾向があります。鼠径ヘルニア患者の80%以上が男性なのは、鼠径管サイズの違いが関係しており、女性の管は男性より小さく、脱腸が起きにくいためと云われています。
また、性別に関わらず、40代以上に発症が多く見られます。製造業や立ち仕事など職業が関係されていることが指摘されています。便秘症、肥満、前立腺肥大症、咳を多くする人、妊婦も要注意と医師は警鐘を鳴らします。
これらの発症傾向から、成人の鼠径ヘルニアは、加齢によって筋肉・筋膜・腹壁などの組織が弱くなることが原因で起こることが分かります。
どこへ行くにもマイカーで移動、至る所のエスカレーター化、PCに向かったデスクワークや便利な宅配システムなど、とかく運動不足になりがちな現代人弱った腹壁や筋肉に、加齢に伴う筋力低下の大波が追い打ちをかけますから、ヘルニアを起こさないという方が不思議な位です。更には、職業病が絡んでくるから厄介です。
例えば、調理師や美容師などは一日中寒い場所に立ち、前かがみになって作業をします。その時に腹圧を要するのですが、運動不足や加齢による筋力低下で体を支え、圧に耐えられるだけの筋肉を持たず、更には動かずに寒い場所に立ちつづけることで血行不良が起こり、筋肉を傷つけてしまいます。
筋肉のコントロールができない、腹圧に耐えられなくなる可能性や負担のかかる既往症も、咳一つくしゃみ一つでヘルニア門を広げる可能性があります。
ではどうしたらヘルニアにならないのでしょうか。筋肉・筋膜・腹壁などの組織が弱くなることが原因なら鍛えればよい!と思いましたか?
確かに鼠径ヘルニアに関係する腹直筋・腹横筋・外腹斜筋・内腹斜筋を鍛えることは有効といえるでしょう。
ですが、全く運動をしていない人や90代の方がいきなり腹筋100回やランニング10kmは無理と云うもの。少しずつでもよいので毎日続けられるトレーニングに励みましょう。例えば、下記のような簡単なトレーニングもありますよ。
・横になっておへそから上へと少し浮かせるようにお腹に力を入れて15秒程静止してみてください…意外と大変ではありませんか?
大きく息を吸い込んでから力を入れて、静止時には呼吸を止める、ゆっくり息を吐き出しながら体の力を抜くということを5回3セットとして、入浴後に行ってみてください。
お布団の上でもできますから、特に広い場所も要りませんし、高齢の方でも無理なく行える腹筋トレーニングになります。ただ、背筋も使っていますから、腰痛症の方で痛みを感じる方は回数を控えてください。
・壁に向かって肩幅に手をつきます。足の位置はそのままに、壁に向かって顔を近づけます。壁に向かって腕立てをすると言えばいいでしょうか。
これも立派な腹筋トレーニングで、5回3セット行いましょう。最初の腕の伸ばし具合で、負担の大きさは変わりますので、最初は近くから、慣れてきたら腕を完全に伸ばした状態で腕立てを行って下さい。
床に対して行うと腕や膝に体重がかかってしまい、変形性関節症の方や体重がある方には負担になってしまいますが、壁腕立てはそれが半減します。
少しずつ運動できる環境ができてきたら、それらの維持するか、ウォーキングやトレーニングなど、無理のない範囲で運動を追加していきましょう。エスカレーターよりも階段といった選択肢も「有」ですね。
ただし、既往症のある方は、その治療が最優先です。その中でも、便秘症や肥満などは生活環境の見直しで改善する可能性があります。食べるものなど考慮しましょう。妊婦さんは妊娠後期に入れば入る程、負担がかかります。切迫早産などの危険性がなければ、体調管理も併せて、適度な運動が必要です。
まとめ
鼠径ヘルニアにはならないことが一番ですが、発症してしまったら再発を防ぐことが大切です。発症予防・再発対策として、年齢と共にどうしても避けられない筋力低下を小さな努力を継続することで食い止めて、少しでも向上するようにしましょう。
身体を壊してお身体のケアをせずにどこに行ったら改善するのか分からなく迷っている方は一度【てらだ鍼灸整骨院】の施術を試してみませんか?
無料相談を遠慮なくお使いください。
0120−405−100