2015年11月25日 : 未分類
脊柱管狭窄症は脊柱管という脊髄の通り道が狭くなることで、神経が圧迫され、手足のしびれや痛み、動かしにくさなどの症状を訴える疾患です。主に加齢などによる椎骨や椎間板、椎間関節、靭帯の変性が原因であることが多く、高齢者を中心に多くの方がその症状に悩まされています。
脊柱管狭窄症の治療は主に整形外科などで受けることができますが、病院での治療以外にできることはないのでしょうか。脊柱管狭窄症の症状を和らげることが期待される方法をご紹介します。
筋肉を暖める・冷やす
脊柱管狭窄症の中でも特に多いとされる腰部脊柱管狭窄症では、腰周りの筋肉を暖めることが効果的であるケースが多くみとめられます。これは、筋肉の血流がよくなり凝り固まった筋肉がほぐれることや、全身の血流が改善されることで症状が緩和する効果が期待できます。また、暖めることで痛みの原因物質であるとされるプロスタグランジンの産出を抑制する効果や、リラックスによる副交感神経の活性化などの利点も伴います。実際の病院での治療の中でも、ホットパックや超音波療法、赤外線療法などの温熱療法という、筋肉を暖める治療法が用いられることもあります。自宅で行うのであれば、暖めたタオルやカイロを腰に当てることや、入浴によって全身を暖める方法などがあります。
また、反対に患部を冷やすことで痛みが和らぐこともあります。冷やす場合には、氷などを直接当てると冷たすぎて低温火傷などを起こしてしまう危険性があります。ぬれたタオル程度でも良いですし、氷を使うのであれば乾いたタオルなどでくるんで当てるのが良いでしょう。
一般的には痛みの症状が非常に強いときや炎症が起こっているときには冷やし、長期間継続している慢性的なしびれや痛みに対しては暖めるのが良いと言われています。しかし、対策による効果は人によって異なるため、自分に合った方法をとるのが良いでしょう。反対に、一般的に良いと言われていることでも、症状が良くならない、悪化するというのであれば避けるべきです。
コルセットの着用
腰部の脊柱管狭窄症などに対しては、コルセットを使うことも症状の緩和につながります。コルセットは体幹の支えとなって、椎骨や靭帯、筋肉の働きを補強してくれ、負担を和らげます。軟性コルセットは服の下につけることができ、普段の生活にも支障を及ぼしにくいため、腰部脊柱管狭窄症の方には重宝されています。特に、症状の出始めの急性期と呼ばれる時期には無理せずコルセットを使って安静にしておくのが良いでしょう。適切なコルセットの選択や装着方法は、医師やリハビリ職員などに指導してもらうことができます。
ただし、コルセットの日常的な使用は体幹の筋力低下を招いてしまう危険性をはらんでいます。もちろん、それを避けようとしてかえって症状が悪化しては意味がありませんが、コルセットの使用方法、使用期間などは自身の症状と専門家の意見などを踏まえて考えるのが良いでしょう。また、腹筋や背筋といった体幹の筋肉を鍛えることは、脊椎の安定化につながる、いわば天然のコルセットです。症状が和らいできたら、軽い運動などで体幹の筋肉を鍛えることも有効です。
福祉用具の使用・日常生活の工夫
また、脊柱管狭窄症の症状がひどくなってきた場合には杖やシルバーカーといった福祉用具を使う方法もあります。杖の使用は、バランスをとるためではなく、体重による負荷を軽減してくれるということに大きな効果があります。また、腰部脊柱管狭窄症の方では、歩く距離が長くなると臀部や下肢のしびれ、痛みが出てくる間欠性跛行という特徴的な症状に悩まされることが多くなります。杖の使用は腰・脚の双方への負担を和らげてくれることから、歩行距離の増大にもつながります。
杖やシルバーカーを使うもう1つの利点は、姿勢がやや前屈みとなることです。腰部脊柱管狭窄症による間欠性跛行では、身体を反らせると症状が悪化し、前屈みの姿勢をとると緩和するという特徴があります。これは、腰椎部分の脊柱管の構造から、前屈みの姿勢で脊柱管が広がりやすいことによるものです。腰部脊柱管狭窄症では自転車に乗っても症状が出にくいとされるもの、杖やシルバーカーと同様に少し前傾気味の姿勢をとることができるためです。
料理や洗い物などの長時間の立ち仕事を行う場合には、小さな台を1つ使って工夫することもできます。用意した台の上に、症状の強い脚を乗せて作業することで症状を出にくくすることが期待できます。また、重症になってくると夜仰向けで寝ることが難しくなってきます。この場合にも、膝の下に枕を入れて、膝を曲げた状態にすることで症状が和らぐことがあります。
同じ脊柱管狭窄症という疾患であっても、神経の圧迫されている部位や程度によって症状の出方は大きく変わってきます。ある方にとっては有効な改善策も別の方にとってはそうでない場合もあります。ご自身にあった改善策を見つけるとともに、症状が緩和しない場合には専門家の意見を仰ぐことも大切です。